トレーサビリティとは、製品や部品がいつ、どこで、誰によって、どのように製造・加工・流通されたかという情報を記録・管理し、それらを必要に応じて追跡・遡及できる状態にすることを指します。
製造業をはじめとするさまざまな分野において、品質の確保や業務の高度化が求められる中、「トレーサビリティ」は企業活動の信頼性を支える重要な仕組みの一つとなっています。
従来、トレーサビリティは不良品の回収や不具合の原因特定といったリスク対応の手段として捉えられることが一般的でしたが、近年ではその枠にとどまらず、
生産性の向上や業務プロセスの最適化、顧客対応力の強化といった“攻め”の活用にも注目が集まっています。
本ページでは、当社が考えるトレーサビリティの本質とその重要性をはじめ、導入によって得られる効果や、実現に向けたポイントについて詳しくご紹介します。
製造業の現場では、「この製品の4M実績を知りたい」、「この部品がどの製品に使われているのか知りたい」
など、なんらかの形でトレースに関わる業務は必ず発生します。
特に自動車、航空機、半導体などの、完成品に高い品質が求められ、かつ部品が多岐にわたるような
業種ではこのようなトレース調査業務が頻繁に発生しています。
品質トラブルが発生した際には、迅速かつ正確な対応が取引先/消費者から求められます。
トレーサビリティが欠如していたことで対応が後手に回り、取引先/消費者からの信用が失墜し、
市場からも退場に追いやられたケース(最悪の場合は廃業)があります。
このような事案を機に、各メーカーのサプライヤー選定基準には、製品の品質だけではなく、
"プロセスの品質"も考慮されるようになってきました。
つまり、品質トラブル時の説明責任を果たせる企業が、取引先として選ばれるようになってきています。
例えば自動車業界では、完成車メーカーがサプライヤーに対して、業界の品質マネジメント規格
(IATF 16949)ベースの品質管理を求めており、リスクに応じたトレーサビリティの確保が、
サプライヤーには要求されています。
また、品質トラブルが発生した際には、製品回収も必要になります。そのような時にトレーサビリティが
不十分であると、製品回収の対象を広めに設定せざるを得ず、結果として対応コストが膨れ上がることで
収益に大きなインパクトを与える可能性があります。
トレーサビリティは、営業ツールや日常の生産活動に活かすことができます。
弊社の事例では、"攻め"のトレーサビリティとして、実際に以下の様な効果を発揮しています。
「トレーサビリティが確保されている製造工程」ということが決め手となり、受注獲得に至りました。 他社の製品との差別化を進められ、結果的に高付加価値化にも成功しました。
詳細なトレーサビリティが取れたことで、不良の低減に繋げることもできます。 ある製品では、特定の部品を組み込んだ場合にのみ不具合が起きるが、部品自体の検査では異常が 見つからず、なかなか不良の原因に至りませんでした。 しかし、トレースの範囲を複数工程に広げて紐づけたことで、前工程で特定の金型を使用した 場合にのみ、このような現象が発生することを突き止め、不具合への対応を可能としました。
あらためてトレーサビリティがもたらす効果を整理します。
分類 | 効果 | 詳細 |
---|---|---|
攻め | 問合せ対応力による差別化 | 製品の4M実績などの問合せに正確に即応できる体制をアピール可能 |
品質アピールの強化 | トレーサビリティが確保されている製造工程であることをアピール可能 | |
規格対応力の向上 | IATF16949、ISO13485、SEMI規格などへの準拠をアピール可能 | |
偽造品への対応力強化 | 調達ルートなどをデータを用いて証明可能(真正性証明) | |
守り | 品質トラブル時の迅速かつ正確な対応 | 関連データの抽出はシステムに任せることができ、取引先など関係者からの問合せに即応可能。 また、影響範囲を適切に絞りこめるので、製品回収などにかかるコスト/損失が最小限に抑えられる。 |
弊社では、スマート・ファクトリー®導入によるトレーサビリティ基盤構築とその活用支援実績がございます。
単なる仕組みの導入だけでなく、定着支援や活用支援を含め、実務と技術の双方に明るいメンバーが貴社の改善の取り組みを支援いたします。
追加作業無しでデータ収集
通常の作業の中で、『自然に』データの取得ができるようにすることが重要です。 単にIDを付ける、または現場に入力端末を設置するだけでは、 ID読み取りなどの『追加作業』が発生します。 そのような仕組みでは、属人的な作業からの脱却は難しく、結果としてデータの正確性を担保することも難しくなります。 弊社では 各種センサーなどを活用し、追加作業無しでのデータ収集をご提案します。 |
活用可能なデータの関連づけ
様々なデータを収集しても、それらの関連づけが適切に行われていなければ、正確な原因分析は行えません。 時刻・品目・製品シリアル・工程など多様な軸の中から、弊社の知見をもとにで意味ある形で各データを関連づけ、傾向や原因などの分析に役立てます。 |
データ活用の支援
収集したデータを不具合発生時のトレースや原因分析だけに利用するのでは、もったいない話です。 詳細な記録が残る事により、具体的なデータに基づいた検査頻度や項目の見直し、不良発生の予防など、 さらに前向きな活動に結びつけることができます。 弊社ではデータ活用による改善支援のノウハウを元に、机上の空論で終わらない改善の取組のご支援が可能です。 |
コスト競争だけをすれば良い時代はとうに終焉を迎えており、いかにして付加価値を高め、
他社との差別化を図るかという点が、現代の製造業には益々求められます。
その付加価値の1つには、"トレーサビリティが確保されている製造工程"も当然含まれており、
さらにその情報基盤があれば、データ活用などを通してさらなる付加価値を生む可能性があります。
トレーサビリティ基盤構築(スマート・ファクトリー®)とその活用実績について興味がある方は、
ぜひ一度ご相談ください。